ハンドメイド作家が新作を生み出すとき、販売前に必ず行うべきなのが「試作」と「試用」。
「使ったらすぐ壊れた」といった いい加減なハンドメイド作品を売ってしまえば、お客様からクレームを受け、ハンドメイド作家としての信用も失います。それどころか、「ハンドメイド品は質が悪い」というハンドメイド業界全体のイメージを損なう恐れも。そんな事態に陥らないためにも、ハンドメイド作家として 試作や試用は"やって当たり前"なのです。
あなたは、きちんと試作・試用していますか?
この記事では、ハンドメイド作品を試作・試用する具体的な流れと、試作や試用するときに確認すべきポイントを詳しくご紹介しています。せっかく買ってくださったお客様の期待を裏切らないためにも、試作と試用の手順をしっかり習得しておきましょう。
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試作・試用の解説動画
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「試作」「試用」とは
「試作」とは、その名の通り「試しにつくってみる」こと。思いついたハンドメイド作品をすぐに大量生産するのはリスクが大きいので、まずは数個だけつくります。量産する前に試しにつくることで、ハンドメイド作品の製作過程や完成品のクオリティに問題がないかを確認することができます。
そして、試作したハンドメイド作品を実際に使ってみるのが「試用」です。できた作品をすぐに売りに出し、クレームを受けてから問題点に気づくのでは、作家としての信用にかかわります。お客様でテストするのではなく、つくった本人が耐久性や着用感を確認することで、クレームを未然に防ぐことができます。
どんな企業であっても、商品化する前にかならず試作を繰り返し、その中からベストな試作品を採用しています。そして、試作品の耐久性実験を何万回と繰り返し、商品の完成度を高めてから、ようやく商品化されます。
個人だと企業規模の耐久性実験は行えませんが、お客様からお金をいただいている以上は、普段どおりの使用で不具合が出ないことを確認してから商品化をするべきです。
試作・試用をやるべき理由
試作や試用をしておけば、あとから浮き彫りになるであろう課題を先に発見でき、そのあとの作業を効率よく進めることができます。
たとえば、試作の段階で「この工程に時間がかかる」「ここでよく失敗する」と気が付けば、商品化する前につくり方を見直すことができ、よりスムーズにハンドメイド作品を製作できるようになりますよね。はじめから効率よく作れるようにしておけば、注文が増えたときも製作に追われることはありません。
また、念入りに試用をしておけば、「ここが壊れやすい」「ここはこうしたらもっと使いやすくなるかも」といった発見ができます。お客様に使ってもらう前に改善点に気がつけば、クレームを回避でき、その対応に悩まされることがなくなります。
改善点はあとから気が付くこともありますが、ある程度は試作や試用の段階ですぐ発見できます。すぐに気づくレベルの改善点を商品化するのはトラブルのもと。クレーム対応や作品の修正には時間がかかります。だからこそ、商品化の前に試作・試用をセットで行い、改善点をさきに発見しておく必要があるのです。
試作や試用を怠るリスク
ハンドメイド作家さんの中には、「試作しないで早く売りたい」「試用しなくても、たぶん大丈夫」といった理由で、試作や試用を怠る方がいます。たしかに、早く売って、お客様の反応をみたい気持ちはわかります。ですが、試作や試用をせずに、ぶっつけ本番で売るのはとても危険な行為。
お客様がハンドメイド作品を買って、「着けようとした瞬間に壊れた」とか、「すぐに金具の不具合が出てきた」「洗ったら着れなくなった」となってしまえば、お客様からクレームを受けます。試作や試用しておけば自分ですぐに気がつけたはずの不具合が、お客様からクレームを受けてから気づくようでは、作家としての信用を失います。
信用を失えば二度と買ってくれることはありませんし、悪い口コミが広がってしまうことさえあります。それどころか、「ハンドメイド品はすぐに壊れる」といった、ハンドメイド業界全体のイメージを損なう可能性さえあります。
お客様からお金をいただいて作品を提供するのであれば、値段に関係なく、それは商売です。仕事として責任を持たなくてはなりません。ですから、試作や試用をきちんと行い、自分もお客様も納得できるハンドメイド作品を送り出しましょう。
試作と試用(商品化)の流れ
試作・試用はワンセットで行います。具体的には、次のような流れで試作・試用を行い、商品化を目指します。
- 商品案を考える
- いくつか試作してみる
- 何度か試用してみる
- 改良・改善点を探す
- 商品化決定
まずは、どんなハンドメイド作品をつくるかを決め、それを試しにつくってみます。実際につかおうと考えている材料を用いて、複数パターンで製作し、「どの方法がもっともスムーズにつくれるか」「完成品はどれが納得できるか」を吟味。そして、試作品の中からベストなものを選んで商品化の候補にします。
商品化の候補が決まったら、自分で試用して、問題がないかをチェック。試用は一度で終わらせるのではなく、数回・数日にわけて行います。試用で問題点が見つかったら修正し、新しい試作品をつくります。
試作・試用を繰り返して、「もうこれ以上、改善の余地がない」と納得のいくハンドメイド作品ができたら商品化の決定。販売をしましょう。
試作で確認すべきポイント
試作段階で確認すべき項目は、大きく分けると「材料」「製作」「作品」の3点あります。ここでは、それぞれの具体的な確認事項をご紹介していきます。
「材料」で確認すること
- 材料費がかかりすぎていないか
- 材料の仕入れ方法に問題はないか
材料は少しずつ購入し、さまざまな材料を使い比べてみます。パッケージを見ただけでは、その素材の本当の良さは実感できません。商品化してから「こっちの材料の方が良かったかも」と後悔しないよう、試作の段階で使い勝手や質感、コストを見極めてから、どれを実際の作品に採用するかを検討します。
また、材料は継続的に仕入れられるかも確認しておくこと。試作で たまたま見つけた安い材料をつかって商品化すると、次に仕入れようと思ったときには、もう生産されていない可能性もあり得ます。安定して手に入れられる材料を選ぶことも心がけましょう。
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「製作」で確認すること
- 製作に時間がかかりすぎていないか
- 製作時に失敗することが多くないか
試作では、つくりやすさもチェックしましょう。試作段階で「1個つくるのに、時間がかかりすぎる」「難しいテクニックを使うため、失敗しやすい」といった問題点が見つかれば、いざ商品化したときに製作に追われたり、破棄が増えたりするため、継続した販売が難しくなります。
自分1人でつくるのには限界がありますから、注文が多くなって製作に追われないよう、はじめから作り方の簡略化を検討しておきましょう。ムダな工程をできるだけ省き、スムーズに製作できるようになれば、時間が節約でき、失敗(破棄)も減ります。
また、作業時間が減れば人件費もおさえられる(作業時間も価格に含まれます)ので、作品の販売価格を下げることも可能です。効率よくつくれる方法を探りましょう。
「作品」で確認すること
- デザインやバランスに問題はないか
- 既存の商品と差別化ができているか
試作品が仕上がったら、デザインやバランスといった見た目に問題がないかをチェック。自分でつくった作品の評価は甘くなりがちですが、売り物であるという意識をもって、なるべく客観的に判断し、一定基準を満たしているかを確認するよう心がけてください。
また、ブランドやコンセプトのイメージにマッチしているか?ライバル作家の作品と比較して、差別化ができているか?を確認することも必要です。
試用で確認すべきポイント
試作をして、これを商品化しようと決めたら、次に試用してみましょう。自分で実際に使ってみて、問題がないかをチェックするのです。
試用で確認すべきポイントは次の通り。
- 使用感は良いか
- 耐久性はあるか
- メンテナンスは容易か
- 安全性は確保できているか
試用は、一度で終わらせるのではなく、数回・数日にわけて行うこと。アクセサリーなら、実際に着けてみて、使用感や金具の具合をみて、数日は試します。すると、バランスが悪かったり、金具の位置がおかしかったり、何日か着けてみると不具合が見つかったりもします。洋服も同じ。実際に試着して1日 出かけてみると、着心地が悪いことに気が付くかもしれませんし、洗濯すると型崩れをおこしたり、縮んでしまうかもしれません。
このように、実際に何度か使ってみると、さまざまな改善点が見つかります。これを改善し、より良いハンドメイド作品を生み出していきます。
改善点はお客様の声から生まれることもありますが、指摘されてから問題点に気づくのではなく、できる限り試用の段階で自分で発見することが大切です。商品化してからクレームにならないよう、何度も試用して、耐久性や使用感をチェックしましょう。
まとめ
ハンドメイド作品を販売するなら、必ず試作と試用をセットで行い、問題がないことを確認してから商品化しましょう。
試作や試用を怠ると、すぐに発見できたはずの問題点に気づかず、お客様からクレームを受けます。結果として作家としての信用を失い、ハンドメイド販売の継続が難しくなります。
試作と試用は多くの時間と労力を費やすため、避けたがる気持ちもわかりますが、やらないと自分の首を絞めることになります。面倒でも、商品化の前に必ず試作・試用をセットで行いましょう。