ハンドメイド作品の写真を撮影するなら、自然光がおすすめです。写真は十分に明るい自然光が入る窓際で撮るだけで、高画質になり、作品の色やディテールが美しくなるからです。
でも、日中に働き、帰宅するのが夜になってしまう人だと、時間の制約があるため自然光で撮影するのが難しい場合があります。休日にまとめて撮ろうと思っても、予定があったり天気が悪かったりすると、自然光で撮れないこともありますよね。
そんなときは、自然光に近い光を再現できる「定常光ライト」を使うのがおすすめ。
定常光ライトを使えば、自然光に頼らずにクオリティの高い写真が撮れるようになります。
定常光ライトを使うとなると、さまざまな撮影機材を用意しなければなりません。準備にお金はかかりますが、天気や時間帯を気にすることなく、いつでも好きなように写真撮影ができるようになります。
この記事で、定常光ライトで撮影するための準備やセッティング方法などを詳しく、わかりやすくご紹介していきますので、「夜間に撮影したい」「天候や時間を気にせず撮影したい」とお考えのハンドメイド作家さんはぜひご参考にしてください。
-
自然光で魅力的な商品写真を撮るためのライティングの基本
今すぐ読む
夜間撮影で準備する機材
まずは、夜間撮影で準備する機材をご紹介していきます。
冒頭でも触れたとおり、夜間での撮影には「定常光ライト」を使います。ライト単体だけだと使えないので、取り付けるための「ホルダー」や、支えとなる「撮影スタンド」などが必要になります。
定常光ライトとハンドメイド作品の間には、「トレーシングペーパー」を垂らします。これをセッティングするには、「撮影スタンド」「トレーシングペーパーポール」「グリップヘッド」が必要となります。
「背景紙」は、撮影の背景に余計な写り込みを防ぐために敷きます。「レフ板」は明るさを補うために使います。
それぞれの機材やおすすめの製品について詳しく解説していきます。
1. 定常光ライト
定常光ライトとは、電源 ON のときは常に光る照明器具のこと。この定常光ライトをつかって太陽の光を再現していきます。
夜間での撮影だと「撮影ボックス」を利用する手もありますが、撮影ボックスだと不自然に濃い影ができたり、背景が足りなくなったりと、思うような写真が撮れないことがあります。定常光ライトは、ライトの角度や被写体との距離といったセッティングの融通が利くので、明るさや光のあて方を自由に調整できます。
定常光ライトのおすすめは「039 Sh50Pro-V」。室内照明よりも明るく、光の色味が太陽に近い高出力撮影用 LEDランプです。これ 1灯あれば、アクセサリーやバッグといった大きさのハンドメイド作品を明るく照らすことができます。
2. ランプホルダー
ランプホルダーとは、電球をさし込んで使用する撮影用のソケット(口金の受口)のことです。ソケット部分のみのもの、ソケット部分にクリップがついたものなどがあります。
この記事では、「039 Sh50Pro-V」に対応したソケットを使用していきます。ほかの定常光ライトを使う場合は、口金など間違えないようによく確認しましょう。
3. 撮影スタンド ×2
撮影スタンドとは、写真撮影に必要な照明器具を取り付けて支えるための機材のこと。
今回の場合は、定常光ライトを取り付けたソケットを取り付け、それを自立させるために1台、トレーシングペーパーを自立させるために1台、計2台 用意します。トレーシングペーパーを使わない場合は 1台で大丈夫です。
撮影スタンドもいろいろありますが、入門機としておすすめなのが「NEEWER」というブランドのスタンド。手頃な価格で手に入れられ、機能性も十分です。
4. トレーシングペーパー
トレーシングペーパーとは、複写するための半透明の紙のことで、撮影の現場では光を拡散させるために使います。
定常光ライトの光は強いため、ハンドメイド作品に直接あてると、濃い影ができて不自然な印象になってしまいます。トレーシングペーパーを「定常光ライト」と「ハンドメイド作品」の間に垂らすことで、光が拡散されて目で見たままの自然な印象に仕上がります。
撮影でよく使われるのが、堀内カラー(HCL)というメーカーのロールタイプのトレーシングペーパー。このMサイズを 1ロール 用意しましょう。
5. トレーシングペーパーポール
トレーシングペーパーは、「定常光ライト」と「ハンドメイド作品」の間に垂らす必要があります。撮影の間ずっと誰かに持ってもらうわけにもいかないので、機材をつかって自立させていきます。
自立させるには、専用のポールにロールタイプのトレーシングペーパーをさし込み、これを撮影スタンドで支えていきます。このポールこそ、「トレーシングペーパーポール」です。言ってしまえばただの棒ですが、丈夫で軽いため、ほかでは代用が利きにくくなっています。
トレーシングペーパーポールは、「TOKISTAR」のポールがおすすめ。安物と違って たわみ も少なく安定しています。
6. グリップヘッド
グリップヘッドは、「トレーシングペーパーポール」と「撮影スタンド」を接続するために必要です。
撮影スタンドの先端に取り付けて、そこからトレーシングペーパーポールを水平に伸ばしていきます。
グリップヘッドは安い商品もありますが、トレーシングペーパーポールを支える重要な部品ですので、できればちゃんとしたメーカーのものを選びましょう。おすすめは「AVENGER」のグリップヘッドです。
7. レフ板
レフ板とは、光を反射させたり、拡散させたりすることで、光の大小や強弱をコントロールするための撮影グッズです。定常光ライトの光だけでも写真を撮ることはできますが、レフ板で光を調整することで、より美しくきれいな仕上がりにできます。
レフ板は簡単に自作できます。既製品を買うこともできますが、ここにお金を割く必要は一切ないので、自分でつくってみましょう。
-
100均の材料だけで「折りたたみ式レフ板」を作る3つの方法
今すぐ読む
8. 背景紙
背景紙とは、ハンドメイド作品を置いて背景を目立たなくするための紙のことを言います。
撮影の背景によく使われるのが「ケント紙」。画材として使われる紙の一種で、表面には にじみ止めのためのコーティングがされており、表面の凹凸が少なく滑らかなのが特徴。ザラザラした画用紙よりも光の反射が良く、適度な弾力性と厚みを持っているため丈夫です。
ケント紙は背景が不足しないよう、大きめのものを用意しましょう。大判でおすすめはサンテックのケント紙です。
夜間撮影に必要な予算
次に、夜間撮影のセッティングにかかる予算をご紹介します。
「夜間撮影で準備する機材」で、さまざまな撮影機材が登場しました。高そうな機材も出てきたため、総額でいくらかかるの?と気になった方も多いのではないでしょうか。ここでは、その目安を記載していきます。
なお、トレーシングペーパー(トレペ)は絶対に必要というわけではないので、
に分けて、それぞれの予算をご紹介しています。
トレペを使わない場合
トレーシングペーパーを使わないとなると、必要な機材と予算は次の通りです。
機材名 | 予算 |
定常光ライト | 10,000円 |
ランプホルダー | 5,000円 |
撮影スタンド ×1 | 3,000円 |
レフ板 | 0円 |
背景紙 | 2,000円 |
総額でおよそ 20,000円となります。レフ板に関しては買うこともできますが自作できるので費用に含めていません。
トレペを使う場合
トレーシングペーパーを使う場合、必要な機材と予算は次の通りです。
機材名 | 予算 |
定常光ライト | 10,000円 |
ランプホルダー | 5,000円 |
撮影スタンド ×2 | 6,000円 |
トレーシングペーパー | 2,000円 |
トレーシングペーパーポール | 3,000円 |
グリップヘッド | 5,000円 |
レフ板 | 0円 |
背景紙 | 2,000円 |
総額でおよそ 33,000円となります。
予算オーバーであれば、無理にはじめからトレペを用意する必要はありません。トレペは定常光ライトの光を拡散するために必要ですが、光は壁にあてたりすれば拡散できます。慣れてきたらトレペの導入を検討してみてください。
確保すべき撮影スペース
準備段階で忘れてはならないのが、十分な撮影スペースがあるかどうか。
夜間での撮影にはさまざまな機材をつかうので、広い撮影スペースが必要です。「機材はそろえたけど、セッティングしてみたら手狭で撮影がしにくい」とならないよう、事前に十分なスペースがあるかチェックしましょう。
撮影スペースは、「撮影台」「撮影スタンド 2台」を置く広さと、自分が撮影のために動ける広さがあれば十分ですので、最低でも 奥行き 2m×幅 2m (2畳)は欲しいところ。
これよりも狭いスペースに撮影機材を並べてしまうと、撮影スタンドに足をぶつけたり、思うように動けなくなったりと、撮影作業が捗らずストレスに感じることがあります。
夜間撮影のセッティング手順
さいごに、「夜間撮影で準備する機材」でご紹介した撮影機材をセットし、撮影ブースをつくる手順をご紹介していきます。
機材のセッティングは次のように進めていきます。
写真を見ていくと大掛かりに思うかもしれませんが、用意した機材をつないでいき、置いていくだけなので、カメラや機械に詳しくなくてもセッティングはできます。安心して読み進めてみてください。
1. 撮影台を準備する
テーブルやデスクといった撮影台を準備します。
撮影台は大きい方が撮りやすくなります。小さすぎると背景が足りなくなってしまうからです。被写体の大きさにもよりますが、60cm × 100cm よりも大きい撮影台を用意しましょう。
撮影台を準備したら、そこに背景紙を敷きます。背景紙は、壁に貼って固定し、曲線を描くように敷くのがポイントです。
2. 定常光ライトをセットする
太陽光の代わりとなる定常光ライトをセットします。
定常光ライトは、撮影スタンドで自立させていきます。
撮影スタンドは、下部のネジを緩め、傘を開くように押し出すことで3本の脚が開きます。脚が開ききったら、ネジを閉めて立てます。
撮影スタンドの先端のネジ部分に、ランプホルダーを取り付けます。
ランプホルダーに定常光ライトをセットします。
以上で、定常光ライトが自立しました。
光は、ハンドメイド作品の斜め前からあてると、作品を明るく照らしながら程よい陰影ができ、自然な印象に仕上がります。そのため、定常光ライトは撮影台の左斜め前に置き、上部から照らすようにセットしましょう。
3. トレペをセットする
定常光ライトの光を直にあてると濃い影ができてしまうため、トレーシングペーパーで光を拡散させていきます。
トレーシングペーパーは、撮影スタンドで自立させ、定常光ライトと撮影台の間に垂らします。
撮影スタンドの脚をしっかり開き、ネジを閉めて立てます。
撮影スタンドの先端のネジ部分に、グリップヘッドのネジ穴を通します。
これだけでは不安定なので、グリップヘッドのネジを閉めて、しっかり固定させます。
グリップヘッドの凹凸にあわせてトレーシングペーパーポールを取り付け、ネジを閉めていきます。
このとき、撮影スタンドの脚のうちの 1本がポールと同じ方向になるようにします。こうすることで、倒れにくくなります。
ポールと反対側のネジ部分に、本などの重しを入れたトートバッグをかけておくことで、さらに倒れにくくなります。
トレーシングペーパーをポールに差し込みます。
必要な分だけトレーシングペーパーを垂らします。以上で、トレペのセットは完了です。
※トレーシングペーパーを使わずに光を拡散させたい場合は、定常光ライトを壁に向けて、光を反射させて作品にあてます。
4. レフ板を立てる
定常光ライトだけでは足りない光を補うために、レフ板を立てます。
ハンドメイド作品を背景紙の上にセットし、定常光ライトと向き合うようにレフ板を置きます。
レフ板は置き方によって明るさや作品の見え方が変わるので、作品が美しく見える位置や角度を研究してみましょう。
5. 光を微調整する
部屋の照明をすべて消して、定常光ライトを点けます。
定常光ライトの高さや角度を調整します。
光の強弱は、定常光ライトとトレーシングペーパーの距離でも変わります。思い通りの光量になるように、2台の撮影スタンドの位置を調整してみましょう。
なお、「039 Sh50Pro-V」はアプリでライトの光を調整できます。購入した箱にアプリの使い方が記載されているので、それを参考にライトの強弱を調整してみましょう。
ここまでのセッティングがすべて完了したら、いよいよハンドメイド作品を撮影していきます。
まとめ
「定常光ライト」を使えば、自然光で撮影したときのようなクオリティの高い写真に仕上がります。光量や光の質、色味、角度も一定にできるため、常に同じような写真が撮りやすいといったメリットもあります。
はじめは機材をそろえるのにお金がかかりますし、光のあて方を研究するのが少し難しかったりします。ですが、定常光ライトでの撮影に慣れてくると、自然光よりもグッと撮影効率が上がり、必ず「準備してよかった」と思えるはずです。
夜間にしか撮影できず困っている方は、ぜひこの記事を参考に、定常光ライトでの撮影にチャレンジしてみてくださいね。