ブランド名は、あとから安易に変更できるものではありません。自分のブランド名がお客様に浸透したころに変更してしまうと、また新しいブランド名を覚えてもらうよう周知しなければならないからです。
一度 決めたら途中での変更は難しいので、活動をはじめたときから先を見据え、後悔しないブランド名を決める必要があるのです。
この記事では、ブランド名で悩んでいるハンドメイド作家さんのために、ブランド名を決めるときのポイントや、具体的な決め方について詳しく解説しています。優れたブランド名の事例や、よくある失敗例などもご紹介していますので、ブランド名を決める際の判断材料にぜひ役立ててください。
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ブランド名の決め方の解説動画
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ハンドメイド作家がブランディングを成功させるために意識すべきポイント
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ブランド名とは
ブランド名とは、その名の通り ブランドを表す名前のこと。
ハンドメイド作家であれば、ショップやブランドを立ち上げるとき、あるいは 販売をはじめるときにブランド名を考える機会が与えられます。そして、ブランド名を「ショップ名」や「屋号」にして活動する作家さんが多いです。
ブランド名は、お客様に覚えてもらい、ほかのブランドと区別をするために付けます。さまざまなハンドメイド作品がある中で、お客様にひと目で あなたのつくったものだとアピールできるように、覚えやすいブランド名をつけましょう。
なぜ、ブランド名が必要なの?
ハンドメイド販売をはじめたばかりだと、「ブランド名なんか なくてもいい」「名前より中身が大事」と考えてしまうかもしれません。たしかに、その考え方にも一理あるかもしれません。
ですが、ブランド名は
には欠かせない要素です。
自分のお店を覚えてもらうため
ブランド名は、ターゲットとするお客様に、自分のお店を覚えてもらうために付けます。ブランド名を覚えてもらえれば、お客様が「またこのお店で買おう」「ほかの作品も気になる」と思ったとき、すぐにブランド名での検索ができ、ほかの作品のチェックができます。
逆に、ブランド名がなかったり覚えにくかったりすると、あなたのお店を探すことが困難になります。実店舗であれば、ブランド名を覚えていなくても、お店の場所さえわかっていれば再訪問ができます。しかし、インターネット販売は実店舗と事情が異なります。インターネット上には膨大な量の情報があり、その中から、ブランド名なし であなたのお店を探しあてるのは、大海原の底から針を探すくらい困難。
ブランド名は、あなたのお店を探す手掛かりになるもの。だからこそ、ブランド名は必要なのです。
お店を広めてもらうため
ブランド名は、お店の存在をお客様に広めてもらうためにも必要です。たとえば、自分のハンドメイド作品を気に入ってくれたお客様が、ほかの人にお店を紹介するとき、ブランド名がわかれば簡単に伝えることができます。
もし、ブランド名がなければ、「このブランドの この作品 よかったよ」とSNSで言及したり、親しい友人に口コミで広めることができなくなります。お客様が宣伝を諦めてしまうのです。せっかくのチャンスなのに、もったいないですよね。
ブランド名は、ヒトからヒトへお店の存在を伝える、もっとも簡単で確実な手段です。お店を気に入ってくれたお客様が、次の見込み客へ紹介しやすいよう、きちんとしたブランド名を考えましょう。
ブランド名を決めるときのポイント
ブランド名は、あとから簡単に変更できるものではありません。途中で変えたいと思わないよう、はじめにきちんとブランド名を考えておきましょう。
ブランド名を考えるときは、以下のポイントをおさえると後悔がなく、長く愛用できるものに決まります。
詳しく解説するので、それぞれのポイントをおさえていきましょう。
覚えやすい
名前は、人に覚えてもらうためにあるものです。ブランド名も覚えやすいものにしましょう。「短い」「シンプル」「読みやすい」といったことを意識すると、お客様の記憶に残りやすく、思い出しやすいブランド名になります。
よくある失敗例が、外国語 表記のブランド名にしてしまうこと。「見た目の良さ」「響きの良さ」などから、多くのハンドメイド作家さんが好んで英語やフランス語をつかいます。ただ、外国語 表記で満足するのは作家本人だけで、お客様には「読み方がわからない」「検索するときに入力が面倒」と疎まれるだけ。つまり、覚えてもらったり、自分のお店を探してもらうチャンスが減るのです。
ブランド名は、ブランドイメージをお客様に伝える手段でもありますが、それ以上に、まず覚えてもらうことが大切。わかりにくい外国語 表記ではなく、ひらがなやカタカナなどの分かりやすいブランド名にしましょう。
呼びやすい
ブランド名は、第三者があなたを呼ぶときはもちろん、自分自身が相手に対面で伝えるときにもつかいます。そのため、呼びやすく、聞き取りやすいブランド名の方が良いでしょう。
たとえば、自己紹介をするときや領収書をもらうとき、ブランド名が呼びにくいものだと、相手も聞き取りにくく、何度も聞き返されてしまいます。これでは聞き手の負担になってしまいますし、聞き取りにくいと、間違ったブランド名が広がることもあります。
ブランド名は、口頭で伝えたときに、相手の頭にスッと入っていく聞きとりやすさも大事です。呼びやすく、1度 言っただけで聞きとれるブランド名にしましょう。
ストーリー性がある
お客様は、ブランド名から「どんなコンセプトやストーリーがあるのか」といったことを想像します。そこに しっかりとした背景があれば、作品の良さだけではなく、ブランド自体の付加価値も訴求でき、感覚的に良いブランドだと思わせることができます。
たとえば、ハンドメイドマーケット「minne」の名前には、次のような由来があります。
"ミンネ"という名前のルーツは、意外にも博多弁から。「見てみんね」「やってみんね」など、語尾につけることで「ちょっと見てみたら?」「一緒にやってみない?」という意味になります。また、アルファベットのminneはスウェーデン語で記憶(memory)という意味もあり…(以下略)
出典:minneの由来
こういった由来がわかると、そのブランドのビジョンやミッションを理解でき、好感を持てるのではないでしょうか。
ですので、ブランド名を決めるときは、その名前にきちんとした意味を持たせましょう。それがお客様にうまく伝われば、親近感がわき愛着を感じてくれます。
優れたブランド名の例
「ブランド名を決めるときのポイント」を把握できたら、実際にあるブランド名を見てみましょう。優れた企業名やブランド名(以下)には、ある共通点があります。
- minne(ミンネ)
- Creema(クリーマ)
- iichi(イイチ)
- BASE(ベイス)
- STORES(ストアーズ)
- Google(グーグル)
- Apple(アップル)
- Amazon(アマゾン)
- Yahoo!(ヤフー)
これらの名前には、「文字数が少ない」「覚えやすい」「読みやすい」「呼びやすい」「検索しやすい」「他に似たブランド名がない」といった共通点があるのがわかるかと思います。加えて、同じローマ字が連続しているネーミングも多いですね。
ブランド名を決めるための3STEP
前述したポイントや実例を踏まえて、実際に自分のブランド名を決めていきましょう。ブランド名は、ブランドや作品のイメージを表すキーワードを組み合わせたり、省略したりして決めていきます。
具体的な手順は次の通り。
1つずつ解説していきます。
STEP1 ブランドや作品の情報を整理する
お客様は、ブランド名から「どんなものを売っているのか、どんなストーリーのあるお店なのか」といった想像をします。そのため、ブランド名とブランドイメージがリンクするような名前をつけることが理想です。
ブランドイメージに沿ったブランド名にするには、まず、あなたのブランドや作品、自分自身への理解を深めるところからはじめます。こうすることで、ブランドに関する情報を整理でき、ネーミングの要素となるキーワードの抽出がしやすくなります。
下記の表は、整理すべき情報の項目です。確認してみましょう。
メインアイテム | ・作品全体のカテゴリー ・定番商品のジャンル |
専門性 | ・どの分野に絞った作品か ・だれをターゲットにしたブランドか |
素材 | 作品に使用する素材 |
テイスト | ブランドや作品、作家の雰囲気 |
サイズ | 作品全体の大きさ、サイズ感、存在感 |
質感 | 作品の見た目、触った感触、持ったときの印象 |
色 | ・ブランドのイメージカラー ・作品全体の色、ポイントとして使う色 |
形 | ・作品そのものの外観的 特徴 ・使用している素材のカタチ |
作家自身 | 自分に由来する要素 |
整理すべき情報の全体像が把握できたら、次のステップに進んでみましょう。
STEP2 ブランド名に使えそうなキーワードを抽出する
ブランドに関する情報の整理ができたら、次にネーミングの要素となるキーワードを挙げていきます。あなたのブランドや作品のイメージを表す言葉や、あなた自身に由来する単語などを、思いつく限り書き出してみてください。
下記の表は、ブランド名に使えそうなキーワードの具体例です。ご参考にしてください。
メインアイテム | ピアス、バッグ、ブローチ、ニット、ワンピース |
専門性 | 女性、男性、ベビー、シニア、犬、猫 |
素材 | レジン、ビーズ、天然石、コットン、羊毛 |
テイスト | ふんわり、カジュアル、ゴージャス、シンプル、レトロ |
サイズ | リトル、プチ、ビッグ、ヘビー、マックス、ミニマム |
質感 | やわらか、ふわふわ、シルキー、ずっしり、ぷっくり |
色 | あか、赤、AKA、レッド、ルージュ、朱、紅 |
形 | まる、サンカク、四角、ハート、星、サークル |
作家自身 | 本名、イニシャル、ニックネーム、誕生日、ペットの名前 |
「色」で挙げたように、同じ意味でも、英語やフランス語にしたり、日本語をあえてローマ字 表記にすることで、雰囲気が変わるものです。さまざまな角度からキーワードを考えてみましょう。
STEP3 キーワードをもとにブランド名を創作する
思いつく限りのキーワードを挙げたら、その中から 特に気に入ったキーワードをピックアップし、それらを組み合わせたりして、独自のブランド名を創作していきます。
たとえば、キーワードを
- 組み合わせる
- つなげる(連結させる)
- 省略する
- 言い換える
- 入れ替える
- 繰り返す
などの方法でブランド名を創作していきます。
複数のキーワードを組み合わせる方法は単純ですが、ネーミングではよく使われる手法です。もし長くなり過ぎたり、ありがちな名前になってしまったら、語尾を省略したり、つなげたりして、短くしてみましょう。別のキーワードに言い換えたり、単語を入れ替えたりするのもおすすめです。
1つのキーワードを繰り返したり、似た響きの言葉を並べるのも良いでしょう。韻を踏み、リズミカルになると強いインパクトがあります。たとえば、「ドッグ ドック(Dog Doc)」という名前はシンプルですが、1度 聞けば忘れることはありません。
ブランド名が決まったら、前述した「ポイント」と照らし合わせたり、後述する「失敗例」に当てはまらないかなどをチェックしましょう。
ブランド名の失敗例
ブランド名を「とりあえず、これでいいかな」と適当に決めてしまうと、途中で「もっとこうすれば良かった」「今さらだけど変えようかな」と後悔します。
でも、ブランド名は安易に変更できるものではありません。ブランド名を変えたら、新しい名前を覚えてもらうよう周知しなければならないからです。
たとえば、以下のようなブランド名は、あとから後悔する可能性が高いです。
1つずつ解説しますので、ブランド名のイメージが固まったら、該当する項目がないか確認してみましょう。
直感や「なんとなく」で決めた
ブランド名は、ハンドメイド作品やその作家のブランドイメージをお客様に印象づける1つの手段。直感や「なんとなく」で決めてしまうと、ブランドのイメージが相手にうまく伝わらなかったり、間違って伝わることがあります。
また、はじめに「この名前でいいか」と適当につけてしまうと、ズルズルとそのまま使い続けてしまい、あとから「やっぱり変えたい!」と後悔するときが必ず訪れます。そのとき、あなたがまだ無名であれば問題ありません。ですが、少しでも売れていれば、せっかくブランド名を覚えてくれたお客様に、また新しいブランド名を覚えてもらわなければなりません。
ブランド名は長く使うもの。直感や「なんとなく」で決めるのではなく、熟考したうえで、納得のいくブランド名をつけましょう。
覚えにくい、呼びにくい
名前というのは、人から覚えてもらい、呼んでもらうためにあるもの。「長くて覚えられない」「フランス語で読み方がわからない」「発音が難しい」「聞き取りにくい」などは、ブランド名の典型的な失敗例。
たとえば、ファッションブランドの「agnès b.」。有名なブランドなので、女性なら知っているかと思いますが、私は はじめてこのブランド名を見たとき、読み方がわかりませんでした。そして、「アグネスビーかな」と間違ったブランド名で認識していました(正しくは「アニエスベー」)。
有名ブランドであれば、読み方が難しくても、すでに正しい名前が周知されているので困ることはありません。でも、私たちは、まだ誰も知らないブランドを立ちあげようとしているのですから、まずブランド名を正しく覚えてもらわなければなりません。だからこそ、「短い」「シンプル」「読みやすい」といったことを徹底し、お客様の記憶に残りやすく、思い出しやすいブランド名にする必要があるのです。
他の作家や企業名・ブランド名と同じ
ブランド名をつけるときは、その名前がすでに使われていないかもチェック。
具体的には、
- ほかのハンドメイド作家さんが使っていないか
- 企業名やブランド名にないか
- 商標登録されていないか
- 似たような名前になっていないか
などを確認しましょう。
まったく同じだったり、似ている名前だと、お客様に誤認させたり、相手とのトラブルになります。また、すでに「商標登録」されていると、ブランド名が使えなくなります。
商標登録に関しては、特許庁のプラットフォームで検索ができます。ここで登録のある名前は、商標法により、「商標の使用をする者に独占的な使用権」を与えられています。これを自分のブランド名にしてしまうと、登録者から「使用しないでください」と指摘されたときに、ブランド名を変えなければなりません。
商標登録されていないことを確認したら、「Google」などの検索エンジンや「minne」などのハンドメイドマーケットで、同じブランド名がないか、似たようなネーミングがないか検索してみましょう。
参考リンク:初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~(特許庁)
まとめ
ブランド名は、自分の子どもに名前をつけるときと同じくらい、じっくりと時間をかけてから決めてください。
ただ、熟考していくうちに複雑な名前になってしまうので、シンプルさを忘れないよう注意しましょう。ポイントは、「覚えやすい」「呼びやすい」ことを軸に、ブランドに込めた想い(ストーリー性)を感じさせるネーミングを考えること。
ブランド名が決まったら、すでに使われていないかもチェック。まったく同じだったり、なんとなく似ていると、あとでトラブルになります。商標登録などを一通りチェックすることをおすすめします。
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