ハンドメイド販売を仕事にするのなら、材料の買い方に対する意識をガラッと変えなければなりません。
趣味のハンドメイドであれば、好きな材料を好きなときに買うことができましたが、仕事でこういった買い方をするのは危険。思いつきで材料を買った結果、突然の廃盤や長期間の欠品により、仕入ができなくなることがあるからです。せっかく人気になった作品も、たった1つの材料のせいで製作がストップすれば、大きな機会損失につながります。
この記事では、ハンドメイド販売を仕事にするなら覚えておきたい、材料を賢く調達する仕入れのキホンをわかりやすく解説しています。「仕入れ」といっても、特別なルートから買い付ける必要はなく、買い方に対する考え方を変えるだけ。意識すると安定した製作活動ができるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
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材料の仕入れの解説動画
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「仕入れ」とは
仕入れとは、「販売目的で商材や原材料を購入すること」を指します。つまり、売るために必要なものを計画的に買うことが仕入れです。
ハンドメイド作品を趣味でつくる場合にも材料を購入しますが、趣味だと、お店に行ってから購入する材料を決めたり、数量や種類も気分で決めたりします。たまたま見つけた割引率の高い特価品や、新作・限定商品などを衝動的に購入することもありますよね。このように、先のことをよく考えずに、思いつきで購入してしまうのは「お買い物」であり、「仕入れ」とは言いません。
仕入れは計画的に行うため、イレギュラーな買い物はしません。「何がいくつ必要か」と事前に決めてから購入します。もちろん、計画にはない商品を買うこともありますが、その場合も衝動や思いつきではなく、今後の活動に役に立ちそうかを十分に検討してから購入を決めます。
仕入れ先を決めるまでの流れ
仕入れ先は、材料を試しに使ってみて、使い勝手や耐久性などをチェックしてから決めます。材料の品質は、実際に使ってみないと分からないことが多いからです。
具体的には、次のような流れで決めていきます。
- 購入先を探す
- サンプルとして少量を購入
- 試作して使い勝手をチェック
- 量産用に材料を注文
材料を仕入れるには、まず、材料を安心して購入できるお店、「購入先」を探す必要があります。購入先は、実物を見てから購入できるお店が望ましいです。自分の目で見極めた方がイメージ通りの材料が手に入りやすく、失敗が少ないからです。
購入先で材料が見つかったら、サンプルとして少量を購入し、実際に手に取って細部まで品質をチェック。この時点で、期待していた材料でないと判断したら、仕入れ先を見直す必要があります。
納得のいく品質の材料を手に入れたら、試作品をつくってみます。使い勝手や耐久性などをチェックして、問題なければ仕入れ先の決定。量産用に材料を注文しましょう。
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上手な仕入れ先の探し方
材料を仕入れるには、まず仕入れ先を自分で探さなければなりません。
仕入れ先と聞くと「一般の人が買えないお店」と思われがちですが、仕事につかう材料を購入するお店は、たとえ大手チェーン店であっても立派な仕入れ先。わざわざ「誰も知らないような秘密のルート」から仕入れる必要はありません。それよりも、継続して仕入れができるお店を選ぶようにしましょう。
仕入れ先の探し方は次の方法があります。
それぞれの特徴をご紹介していきます。
近所の手芸店を探す
近所の手芸用品店を仕入れ先にすれば、定期的に商品をチェックしに行けたり、材料が足りなくなってもすぐに買い足しができます。お店によっては、店員さんから使い方や関連商品を教えてもらうこともできます。何度も足を運び常連になれば、店員さんがあなたの知りたいジャンルの商品を調べておいてくれることも。
このように、近所の手芸店は通いやすく、材料に詳しい店員さんとのコミュニケーションがとれるのが良いところ。近所の手芸店やクラフトショップ、ホームセンター内の手芸コーナーを仕入れ先の候補として探してみましょう。
問屋街を探索する
問屋とは卸売業者のことで、問屋があつまる場所を問屋街と呼びます。問屋街といえば「浅草橋」や「日暮里」が代表的で、ハンドメイド作家のあこがれの街でもありますよね。問屋はまとめて購入することが前提となっているので、少量での「お試し買い」ができない代わりに、市場価格よりも安く買えます。
問屋のお客様は基本的に業者ですが、個人でも利用できるお店はあります。ただし、接客をはじめとした細かいサービスがなく、お店ごとに独自のルールがあるため、一般的な手芸店のようにマイペースなお買い物はできません。はじめて訪問する場合は、お店に書かれている貼り紙などをよく読んで、ルールを守って仕入れましょう。
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通販サイトを探す
地方に住んでいるハンドメイド作家さんで、近所に手芸店がなく、問屋街にも行けないのであれば、大手手芸店の通販サイトや、卸売りのサイトを利用するのが便利。商品のバリエーションが豊富で、実店舗よりも割安で購入できることも。
ただし、通販サイトでの仕入れは、画像と実物のギャップが大きかったり、商品の欠品が目立つこともあるため注意が必要。はじめは少量ずつ購入し、様子を見てから本格的に仕入れたほうが安心です。生地はサンプルがもらえることもあるので、仕入れ前にそういったサービスを活用するのも良いでしょう。
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手芸本や専門誌で情報収集
ハンドメイド作品のつくり方が掲載されている手芸本や専門誌には、作品に使用した材料一覧が掲載されています。その情報をもとに、材料を取扱う手芸店を探してみるのも良いでしょう。
インターネットで材料を見ると、端末によって色の見え方に大きな違いがありますが、書籍では実物と近い色味を確認することができます。気になる材料があったら、通販サイトや実店舗で購入してみましょう。
材料を賢く仕入れるポイント
仕入れ先が決まったら、実際に材料を仕入れてみます。
材料の仕入れは、継続的に行うことを念頭において、計画的に購入することが大切です。何も考えずに仕入れてしまうと、大量の在庫を抱えてしまったり、途中で仕入れができなくなるなど、思わぬ落とし穴にハマることがあるからです。
次のポイントをおさえて、計画性のある仕入れを心がけましょう。
それぞれのポイントをご紹介していきます。
ちょうどいい数量を計算する
仕入れる量は、少なすぎても多すぎても困ります。少なすぎると、注文が増えたときに素早く対応できませんし、多すぎると自宅で長期間 保管しなければならず、品質管理に気を配らなくてはならないからです。ですので、仕入れは "ちょうどいい" 数量を計算することが大切です。
仕入れの "ちょうどいい" 数量は、「どんな作品を、どれくらいの期間で、いくつ製作する」といった製作プランを立てると算出できます。あとは、どのくらいのペースで仕入れるかを決めれば、無駄のない仕入れ計画ができます。
たとえば、ハンドメイドのピアスで、材料は「カン付き 丸玉ピアス:1個」「9ピン:1本」「樹脂パール:1個」「カン付き Aカン:1個」「クリスタル:1個」を使用するとします。これを1日3組つくり、材料は1週間ごとに仕入れるなら、毎週 21組分の材料を仕入れるのが "ちょうどいい数量" になります。
このように、「いつ、何を、何個 仕入れるか」と決めておけば買い忘れを防止でき、効率よく製作ができるようになります。
はじめて使う材料は少量購入する
一度も使ったことのない材料は、たとえ割高になっても、まずは少量だけ購入しましょう。
使ったことのない材料は、「実物を見てみたらイメージと違った」「1つ試作してみて使い勝手が悪いことに気がついた」など、自分が期待している品質ではない可能性があるからです。
少量購入し、試作品をつくって問題がないことを確認してから仕入れるようにしましょう。
安定供給されているものを選ぶ
材料の仕入れでは、継続的に仕入れできるものを選ぶことも大切です。材料費を安くおさえるために、たまたま見つけた安い材料を購入して作品をつくると、次に仕入れようとしたときには、もう生産されていないことがあるからです。
せっかく人気になったハンドメイド作品も、材料の仕入れが途絶えると、似た材料を探さなくてはなりませんし、見つかるまでの間 製作がストップしてしまいます。これでは時間のロスになるだけでなく、大きな機会損失につながりますよね。
ですので、材料を選ぶときは、安さの追求よりも継続して仕入れられるかどうかを優先して考えましょう。
材料を仕入れたあとにやるべきこと
材料を仕入れたら、そのままにせず、すぐに次の3つを済ませておきましょう。
それぞれの作業をやるべき理由について説明していきます。
検品する
ハンドメイド用の材料は、ほとんどが大量生産されているので、すべてが良品であるとは限りません。ビーズや金具などの材料をひとまとめで売っている場合だと、5%ほどの不良品が含まれていると言われています。
製作に取りかかってから材料の不良に気がつくと、モチベーションが下がったり、場合によっては数量不足で作業がストップしてしまうことも。不良や不足のない材料を確保することも、ハンドメイド作家の仕事のひとつ。材料を仕入れたらできるだけ早く検品し、不良や不足がないかを確かめるクセをつけましょう。
もし、検品時に不良品の割合が多いと感じたら、違う材料に切り替えたり、仕入れ先の変更を検討してみてください。不良品の少ない仕入れ先を選ぶことで、安定したハンドメイド作品づくりができます。
レシートを保管する
材料を仕入れたときのレシートや領収書は、大切に保管しておきましょう。レシートを保管しておけば、購入した材料の店名・商品名・品番・値段などを確認するときに役に立ちますし、検品時に見つかった不良品を交換してもらうときにも使えます。
レシートは確定申告でも必要になります。仕入れた材料は経費にでき、確定申告のときに経費として計上しておけば節税ができます。材料を経費にするには、支払いがあった事実を証明するためにも、レシートや領収書を保管しておくことが義務になっています。確定申告が必要な人は、レシートは捨てずに、クリアファイルなどで大切に保管しておいてください。
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仕入帳に記入する
材料を仕入れたあとは、「仕入帳」に記入しましょう。仕入帳とは、購入した材料の日時、商品名、仕入れ先、値段、数量をメモし、ひとつの情報としてまとめたリストのこと。いつ、どこで、何を、どのくらい購入したかを把握しておけば、仕入れのタイミングやサイクルをつかむことができ、計画が立てやすくなります。また、もうすぐなくなりそうな材料を買い足すときに、わざわざ調べなおす必要がなくなり、スムーズに注文ができます。
仕入帳の作成は、手書きのノートでも十分ですし、Excelなどの表計算ソフトなどでデータ化するのも良いでしょう。リストの項目には、値段のほかに1個あたりの「単価」を割り出してメモしておくと、材料費の計算がしやすくなるのでおすすめです。
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材料の仕入れでよくある失敗例
安さにつられて材料を仕入れたものの、「大量の在庫を抱えてしまった」「途中で仕入れができなくなった」などの状況に陥るのは、慣れない初心者によくある失敗談。
ここでは、仕入れのよくある失敗例を3つご紹介するので、あなたも同じ失敗をしないようによく読んでおきましょう。
大量に購入したけど使わなかった
材料は、大量に仕入れることで手間が省けるだけでなく、割引で安くなったり、送料をおさえることができます。ですが、一度も使ったことのない材料をいきなり大量に仕入れるのは危険。材料の品質は、お店に陳列されている様子や、インターネットの画像や動画だけでは判断ができないからです。
特に金具類は、見た目は似ていても、実際に使ってみるとイメージと違うことがよくあります。たくさん仕入れたものの、試作品をつくってから「自分が期待していたものと違う…」と気づけば、赤字になるだけでなく、在庫の処分に困ることになります。返品できたとしても、送料を負担しなければならず、業者との やり取り でムダな時間と労力を使います。
新しい材料を買うときは、たとえ割高になっても少量だけ購入して、様子を見てから仕入れるようにしましょう。
海外から仕入れたらトラブルに遭った
インターネットをつかえば、海外での直接 買い付けも難しくはありませんが、個人での直接輸入はトラブルがつきもの。国内の業者を通して仕入れるよりも安い代わりに、「写真と違う商品が届く」「不良品の割合が多い」「天候などによる配送遅延」などのリスクがあります。
ただでさえ、海外からの仕入れは商品の到着までに時間がかかるのに、こういったトラブルに遭うと製作が滞るだけでなく、余計な心配事が増え、精神的な負担が のしかかります。慣れない人にはハードルが高いので、はじめは安心して仕入れができるお店を選ぶようにしましょう。
廃盤や欠品続きで仕入れができなくなった
材料の仕入れでは、継続的に安心して購入できることを第一に考えます。イメージとマッチしている素材をできるだけ安く買うことも大切ですが、仕入れが途絶えてしまうと、作品づくりができなくなるからです。
仕入れが途絶えやすい材料として「新作」「限定品」「季節商品」「特売品」「輸入品」などが挙げられます。これらは、突然 廃盤になったり、長期間の欠品が続いたりするので、仕入れには一考の余地があります。
万が一、仕入れができなくなったとしても、代用品を探せば解決できるかもしれません。でも、すぐに代用品が見つかるとは限りませんし、もし理想の材料が見つかったとしても、それが今までよりも高値であれば、利益を圧迫する原因になります。こういったことを踏まえると、材料の衝動買いは避け、安定供給されていることを優先して仕入れたほうが賢い選択と言えるでしょう。
まとめ
ハンドメイド販売を仕事にするなら、材料を計画的に仕入れることが大切。「どんな作品をどれくらいの期間で何個つくる」という製作プランを立て、必要な材料をどのくらいのペースで調達するかを決めてから仕入れをしましょう。計画的に仕入れることで、材料の買い忘れや衝動買いを防止できます。
仕入れる材料は、長期間に渡り、同じものを同じお店から繰り返し仕入れることになるため、安定供給される見込みがあるものを選ぶと安心です。はじめて使う材料であれば、まず試作して問題がないことを確認してから仕入れを決めましょう。
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