著作権を侵害すると、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金に処せられ、懲役と罰金がともに科せられることもあります(著作権法119条1項)。稼ぐためにハンドメイド販売をはじめたのに、訴えられたり、罰金を科されては本末転倒ですよね。
ただ、著作権は非常に複雑で難解なため、具体的にどんな製作物が著作権侵害になるのか分からないハンドメイド作家さんも多いはず。
そこでこの記事では、
について分かりやすく解説します。
他人の権利を傷つけないためにも、そして、自分の身を守るためにも、著作権を侵害してしまう危険なケースについて知っておきましょう。
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著作権の解説動画
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著作権とは
「著作権」は知的財産権のひとつで、作品を創作した人に対して、法律によって与えられる権利のこと。
自分の考えや気持ちを作品として表現した「著作物」を保護し、著作者の努力や苦労に報いると同時に、利用者がどのように扱うべきか?といったルールを定めています。
著作権は著作物を保護するための権利です。
著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。
著作物がだれでも好きなように利用できてしまうと、制作者(著作者)が不利益を被ります。たとえば、無断で複製され、インターネットで販売されてしまうと、著作者の苦労が報われませんよね。
一方で利用者は、著作物をどのように扱うべきか?といったルールが定められていないと、どの範囲まで利用していいか判断できず困ります。
このような無秩序な社会だと、著作物を生み出そうとする著作者が減り、文化の発展が妨げられます。
そこで、「著作権」が定められました。著作者の利益を守りつつ、利用者のルールを定めることで、日本の文化全体を発展させることが、著作権の目的です(著作権法1条)。
権利侵害となるハンドメイド品の例
著作物は著作権で保護されています。著作権を侵害すると、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金に処せられ、懲役と罰金がともに科せられることもあります(著作権法119条1項)。
ここでは、著作権や商標権といった知的財産権の侵害となるハンドメイド品の例を挙げます。
以下は、権利侵害のおそれがあるハンドメイド品の代表例です。
「知らぬ間に権利侵害してた」とならないよう、それぞれ、どんな権利を侵害するのかチェックしましょう。
本に掲載されている作品を模倣
ハンドメイド作家さんの中には、作り方やお手本が掲載された手芸本を参考にしている方も多いでしょう。
本に掲載されている、基本的な技術は参考にしても問題にはなりません。でも、掲載されているハンドメイド作品や図案をマネして販売する行為は著作権侵害の可能性があるため、商品化はできません。
Q. 書籍を参考にした作品は販売できますか?
A.市販の書籍を参考に作られた作品の販売は、書籍の規定に従って判断してください。
※「商用での使用は禁止」等の注意事項が記載されている場合、販売はできかねます。出典:Creema help
一般的に、書籍には商用での使用を禁止する記載があります(以下)。
本書に掲載した作品は、個人で楽しんでいただくことを前提に制作しております。掲載作品もしくは類似品の全部または一部を商品化するなどし、販売等することは、その手段・目的に関わらずお断りしております。
本の作り方や掲載作品は、参考程度にとどめ、模倣する行為は避けましょう。
なお、手芸本によっては、「商用利用可」「著作権フリー」としていることもあります。書籍を手本にするなら、商用可の手芸本を選択したほうが安全と言えます。
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キャラクターを使用または模倣
アニメやマンガ、映画などに登場するキャラクターは著作物です。
キャラクターというものは、具体的に表現することで著作権で保護されます。その結果、具体的に表現されたキャラクターは自由に使えないということになるのです。
そのため、キャラクターを無断で使用したり、そのキャラクターを模倣したりすると、著作権の侵害となります。たとえば、キャラクターがプリントされた生地でハンドメイド品をつくり、ネットで販売すると、著作権の侵害として訴えられる可能性があります。
原則として、権利侵害の恐れがあるため、キャラクターがプリントされている生地や素材を使った作品、またはそれ自体の販売・展示は禁止しております。
実際に、キャラクターのマスクカバーを販売して逮捕された事件もあります(事例を詳しく見る)。他人が権利を有しているキャラクターを、ハンドメイド販売に無断使用するのは絶対にやめましょう。
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ブランドのロゴを使用または模倣
ブランドのロゴは、著作権や商標権といった知的財産権で保護されているものがほとんど。そのため、無断使用または模倣すると、著作権や商標権の侵害となります。
商標権侵害
商標権は、自社と他社の商品を区別するための文字、図形、記号などを独占的に使用できる権利です。
侵害例:ロゴマークを許諾なく使用した商品を販売すること出典:メルカリガイド
たとえば、ハンドメイド品をつくり、そこにブランドのロゴが描かれたワッペンを縫い付けて販売すると、著作権や商標法違反となります。実際に、石鹸にブランドロゴを無断使用して書類送検になった例もあります(事例を詳しく見る)。
ブランドロゴを使用すると、正規品であると誤認させてしまいます。絶対にやめましょう。
キャラクターやブランド名を使用
キャラクター名やブランド名のほか、マンガやアニメのタイトルは、商標登録されていることがあり、無断で使用すると商標権の侵害となります。
権利侵害の恐れのある文言(ブランド名やキャラクター名)などを作品名や、作品説明に記載することは、禁止しております。
たとえば、人気アニメ「鬼滅の刃」は商標登録されているので、ハンドメイド作品をネットで販売するとき、タイトルに「鬼滅の刃」と記載すると商標権の侵害となります。「○○風」「○○好きな方」といった表記もNG。
実際に、フリマアプリの商品説明欄にブランド名を記載したハンドメイド品に対して、商標権の侵害が認められた裁判もあります(事例を詳しく見る)。キャラ名やブランド名を記載することで閲覧数は伸びますが、商標権侵害となるので注意しましょう。
なお、商標登録されている名称は「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」より検索できます。
参考リンク:特許情報プラットフォーム
「キット」を元に複製
製作に必要な材料がセットになった「キット」は、個人でたのしむ商品です。複製して販売することができません。
キット内で「商用での利用は禁止」などの注意事項が記載されている場合は、販売できません。
ほとんどのキットには、『製作した作品は個人の範疇にてお楽しみください。作成図を元にしたキットの販売及び商品の複製を禁じます。』といった、商用利用を禁止する記載があります。こういった記載がなくても、ほとんどのキットは商用利用できませんので注意しましょう。
アイドルや芸能人を使用
芸能人やジャニーズなどのアイドルを使用し、偽物のアイドルグッズを販売することも違法です。これは「著作権」ではなく、「パブリシティ権」の侵害となります。
芸能人の写真を自分で印刷した商品は出品可能ですか?
A.出品できません。
知的財産権などの権利を侵害する商品に該当する可能性があるため、出品を禁止しています。出典:メルカリガイド
権利侵害で逮捕・訴えらえた事例
ここでは、著作権や商標権といった知的財産権を侵害し、訴えられたり、書類送検となった事例をご紹介します。
キャラマスクを無断販売
人気漫画「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」のキャラクターを無断であしらったマスクカバーをインターネット上で売ったなどとして、警視庁は21日、静岡県三島市のアルバイトの男(66)を著作権法違反(頒布及び頒布目的所持)の疑いで、東京地検に書類送検した。
出典:朝日新聞デジタル
キャラクターの生地を無断使用すると、著作権の侵害となります。
偽スヌーピー商品を販売
人気キャラクター「スヌーピー」のデザインと文字を使用した類似商品を販売したとして、奈良署は14日、商標法違反と不正競争防止法違反の疑いで、大阪市旭区生江、無職、上田小夜香容疑者(34)を逮捕した。
出典:産経ニュース
この事件では、著作権ではなく、商標権違反や不正競争防止法違反として逮捕されています。
偽シャネルのペット用品を販売
ブランド「CHANEL」のロゴを自身のブランドのペット用品に縫い付けるなどして販売。15日に商標法違反で現行犯逮捕されたとのこと。
出典:ねとらぼ
ブランドのロゴを無断使用すると、商標権の侵害となります。
偽シャネルの手作りせっけんを販売
無許可で高級ブランド「シャネル」などに似せたロゴ入りのせっけんなどを製造販売したとして、愛知県警は1日、同県新城市の無職の女(23)を医薬品医療機器法違反(無許可製造販売)と商標法違反の疑いで名古屋地検に書類送検し、発表した。
出典:朝日新聞デジタル
こちらも同様に、ブランドロゴを無断使用し、商標権等の侵害で書類送検となっています。
ブランド名を無断使用
フリーマーケットアプリ大手メルカリで「#」に続けて他社商品名を表示するハッシュタグ(検索目印)を用いて類似の出品物を宣伝する行為が商標権の侵害に当たるかが争われた訴訟で、大阪地裁が侵害と認め、表示の差し止めを命じる判決を出した
出典:産経ニュース
ハンドメイド作品のタイトルや商品説明にブランド名を記載すると、商標権の侵害になります。
権利侵害せずに販売するには
ここまで、著作権等を侵害してしまうケースについてご紹介してきました。
では、権利侵害せずにハンドメイド作品を販売するには、どうすればいいのでしょうか。
オリジナルを生み出す
ハンドメイド作品を販売するなら、つくった物が「オリジナル」でなければなりません。オリジナルとは、独創的で唯一無二のものをいいます。
望ましいのは、何もないところから独自にイメージをふくらませて製作した、完全なオリジナル作品を生み出すこと。ですが、人とまったく違う物を、ゼロから生み出すのは容易ではありません。
オリジナリティは、既存のアイデアを組み合わせ、そこに新しい価値を加えるだけでも生まれます。既存のアイデアやデザイン、アイテム、技法を組み合わせて、そこに自分らしさをプラスした物もオリジナル品です。
ですので、「権利侵害しないためにも、人と違うものをつくらなければ!」と思い込む必要はありません。
使用する素材にも注意
ハンドメイド作品を販売するとき、使用する素材にも注意してください。
たとえば、キャラクターやブランド生地、小物類は商用利用を禁止している場合がほとんど。インターネットには、写真やイラストが無料で利用できる素材がありますが、無料でも著作権を放棄していない場合があります。手間ではありますが、必ず、商用利用できるか確認しましょう。
だれかに素材の制作を依頼するときも注意。商用利用するには別料金が必要だったり、商品化するには著作権の買取が必要となるケースがほとんどです。
まとめ
ハンドメイド作家にとって、インターネットは欠かせない存在。ハンドメイド作品をネットで販売したり、SNSに投稿したりして、自分の活躍の幅を広げる重要な場となっています。
その一方で、インターネットはハンドメイド作家が他人の著作権を侵害していないか?をチェックする監視ツールとしても機能しています。そして、インターネットには「著作権を侵害している作品を見つけて非難したい」と待ち構えている人も少なくありません。
作品を手軽に発信できる時代だからこそ、他人の権利を侵害しないよう注意しましょう。