商品写真に限らず、どんな写真においても「背景」は「被写体」と同じくらい大切です。
撮影者からすると、背後に映るものよりも商品(被写体)を見てほしいため、どうしても「商品の写り方」に意識が集中してしまいます。その結果、商品がもっと魅力的に写るようにと、背景を目立たせたり、小道具で雰囲気を演出することに時間を割いてしまいがち。
ですが、背景が目立ってしまうと、主役である商品が埋もれてしまい、まったく魅力的に写らないことがあります。「背景は頑張って工夫したのに、撮影してみたら写真はイマイチ」と悩む原因がこれです。そうならないためにも、商品写真の背景はシンプルな白にし、主役を引き立てるように徹底することが大切です。
では、どうすればシンプルな白背景で撮影できるのでしょうか。ここでは、商品を引き立てる白背景のつくり方を詳しくご紹介しています。商品写真の背景づくりに悩む方は、ぜひさいごまでご覧ください。
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商品写真のよくある失敗例
冒頭でも触れましたが、商品写真において「背景」は「商品」と同じくらい大切です。背景は商品を演出する手段のひとつですので、背景をうまく演出することで、商品を引き立たせることができます。
注意したいのが、ここでいう「演出」とは、単に「装飾する」「おしゃれに見せる」という意味ではなく、あくまで商品を引き立てるために演出する、ということです。演出にこだわった結果、背景が商品より目立ってしまっては本末転倒。
特に以下のような「間違った演出」には気を付けてください。
これらの演出は、商品が引き立たないどころか、返って安っぽく見えたりもします。
背景が主張しすぎ
背景の主張が強いと、肝心の商品が埋もれてしまい、商品の形状や色味が正しく伝わらないことがあります。
たとえば、商品より鮮やかな色味を背景にすると、商品が目立ちにくくなるどころか、背景の色が商品に反射し、実物と異なって見えてしまうことがあります。背景の色は、商品を際立たせる色を選ばなくてはなりません。商品より背景が勝ってしまうと、写真の魅力が半減したり正確性に欠けたりするので注意しましょう。
背景は、「色」だけでなく「素材」も商品の雰囲気に大きく影響します。地味な色味でも、布などのシワが目立つ素材、主張の強いフェイクファーなどを背景にすると失敗しやすいです。最初は、無彩色の紙や木のテーブルなど、目立たない素材を背景に選ぶと良いでしょう。
意味のない装飾
商品写真に意味のない装飾が写っていると、ごちゃごちゃして見えます。ごちゃごちゃして見えると、視点が定まらず、バラバラな印象を与えてしまいます。
よく目にするのが、おしゃれに見せようとフェイクグリーンを "なんとなく" で置いた商品写真。たしかに、花材を適切に配置すれば、それがアクセントになり、魅力的な商品写真になります。ですが、花材の量・色・質感が商品に合っていないと、商品よりも花材が目立ってしまい、商品から注意をそらす存在となってしまいます。また、100均などで用意した安価な花材は、チープな印象を与えてしまうことさえあります。
このように、何も考えずに選定した小道具を適当に配置してしまうと、商品が引き立たないどころか、悪目立ちする邪魔な存在となってしまいます。撮影に慣れるまでは、意味のない装飾はやめましょう。
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背景は「白」で撮るべき理由
『商品写真のよくある失敗例』でご紹介した通り、商品写真の背景は目立つべきではありません。目立つと商品が引き立たなくなり、色や形状が伝わりにくくなります。白背景にすれば、商品の特性をシンプルに伝える写真が撮れます。
背景は目立つべきではないから
商品写真は、商品の後ろに写る「背景」がその大部分を占めています。写る面積が多いということは、それだけ写真の印象を大きく左右する、ということです。その背景が目立っていたり、気になるモノが写っていたりすると、一番 見せたい「商品」よりも「背景」に注目されてしまいます。
言うまでもありませんが、商品写真でもっともアピールしたいのは背景ではありません。あくまで "主役" は商品で、背景は "脇役" 。 "脇役" は "主役" を引き立てるためにあります。背景が目立ち、商品から注意をそらすようなものであってはなりません。だからこそ背景はシンプルな白にし、商品を引き立てるような写真を撮ることが大切なのです。
白背景は分かりやすいから
お客様が実際に手に取ることのできないインターネットでの販売は、商品の色や形を正しく伝える手段として、写真がとても重要な情報源となります。文字で説明するより、写真を見せたほうが圧倒的にイメージしやすいからです。その写真がわかりにくいと、お客様が求めている情報をすべて伝えることができなくなります。商品の特徴が分かりにくければ、購入意欲も失せるでしょう。
背景をシンプルな白にした商品写真は、余計な写り込みがなく、商品の色や形状、ディテールがはっきり認識できるため、お客様にとって非常に分かりやすい写真と言えます。実際、ECサイトでは白背景で商品を撮影することをガイドラインのひとつとして定めていることもあります。
メイン画像は、背景を白にして、販売する商品のみを表示し、商品が画像の枠内に収まっている必要があります。
白背景でも商品は売れるの?
理想の商品写真は、お客様が見たときに、一瞬で「欲しい」と思わせること。実際、売れてる商品の写真を見てみると、背景がおしゃれで雰囲気があったり、さりげなく配置された小道具のセンスが絶妙だったりしますよね。素敵なワンシーンを感じさせるような写真を撮れば、ターゲット層の共感を生み、購入意欲を高めることができるでしょう。
ただ、商品のイメージを的確に伝え、お客様の心にグッとささる写真を撮るのは簡単ではありません。これを習得するには、商品の「カメラ写り」を研究し、練習を積み重ねなければなりません。練習もなしに、いきなり素敵な写真を撮ろうとしても、世界観がごちゃごちゃした失敗写真を量産するだけです。
商品写真において最優先すべきことは、イメージを伝えることではなく、商品の形状や色味を正確に伝えること。ですから、はじめはシンプルな白背景で、商品の特性をわかりやすく伝えることを心がけてください。
背景をシンプルな白にすると、お客様の心にグッとささるような写真にはなりません。殺風景になるため、「本当に売れるのか」と疑問に思う人もいるでしょう。ですが、購入意欲を高めるツールは写真以外にもあります。写真で商品の魅力を伝えきれなければ、文章で補えば良いのです。写真はシンプルにし、使用シーンや機能性といった魅力は文章で伝えることで、素敵な写真を1枚 撮るよりも、お客様の購入意欲を高めることができます。
白背景で撮影すれば商品が引き立つため、明るさや光の当たり方といった「カメラ写り」の研究をしやすくなります。練習により上達したかどうかも実感しやすいでしょう。撮影技術の上達を実感したら、ステップアップとして商品のイメージを伝える写真にチャレンジしてみてください。
白背景のつくり方と撮影方法
ここまで、「商品写真は白背景で撮るべき」とお伝えしてきました。では、白の背景はどうやってつくるのでしょうか。
ここからは、白い背景のつくり方とその撮影方法を、「ふかんで撮る(斜めのアングルから撮る)場合」と「水平アングルで撮る場合」に分けてご紹介していきます。
ふかんで撮る(斜めのアングルから撮る)場合
白い背景は、商品の後ろに白の「背景シート」を敷くことで簡単につくれます。背景シートとは、被写体を撮影するときに、背景が目立たないように敷くシートのこと。「背景紙」「バックシート」などとも呼ばれ、物撮りでよく使われる撮影グッズのひとつです。
背景シートにも、さまざまな大きさのものがあります。「ふかん」で撮る(斜めのアングルから撮る)場合、背景シートは少なくとも A4 ~ A3 以上の大きさを選びましょう。
ふかんとは、地面に対して 45~90 度くらいのアングルで撮影することを指し、カメラを上から下に構えます。この角度から撮影する場合、写真に奥行きを必要としませんから、背景シートも大きいものである必要はありません。ですので、A4 ~ A3くらいの背景シートで十分です。
ふかんで撮影する商品の例としては、アクセサリーなどの小さい商品や、財布などの平べったい商品が挙げられます。ただし、平べったい商品でも、奥行きを伝えたいときは水平アングルに近い角度で撮影することがあります。この場合は、『水平アングルで撮る場合』を参考にしてください。
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A4 ~ A3 の白の背景シートは、通販サイトで入手できます。私が愛用しているのは「エレコム」の背景シートです。ちなみに、100均で白い画用紙が売っていますが、光の反射が写り込んだり、目の粗い画用紙だと不要な影がでたりするのでおすすめはしません。
A4 ~ A3 の白の背景シートを入手したら、窓辺の明るい場所にテーブルなどを設置し、そこに背景シートを敷きます。窓際に設置する理由は、照明よりも自然光の方がキレイに撮れるからです。
セッティングが完了したら、さっそく商品の撮影に取りかかりましょう。
水平アングルで撮る場合
水平アングルで撮る場合も、背景シートを使います。
水平アングルで撮る場合、背景シートはかなりの大きさが必要になります。サイズで言うと、四六半栽(545mm × 788mm)~四六全判(788mm × 1091mm)くらいは必要です。
なぜなら、水平アングルはカメラを低い位置から構えるので、背景シートに「立ち上げ」をつくる必要があるからです。
たとえば、バッグなどの立体的な商品を撮るなら、形や厚み、奥行きを伝えるためにカメラを水平に近い角度(地面に対して 0~30 度くらい)で構えますよね。この角度から撮影する場合、背景シートをテーブルに敷くだけだと、背景が足りなくなり、後ろの壁面などが写ってしまいます。それを防ぐためにも、大きめの背景シートを用意し、立ち上がりをつくる必要があるのです。
四六半栽~四六全判の白の背景シートについても、通販サイトで入手できます。ちなみに、100均で白い大判の模造紙が売っていますが、模造紙はシワができやすく、撮影時に目立ってしまうので背景に使うことはおすすめしません。
どうしても模造紙で撮影したいということであれば、「100均でハンドメイド作品の撮影環境を整える方法」でご紹介しているので、こちらの記事をご参考にしてください。
四六半栽~四六全判 の白の背景シートを入手したら、窓辺の明るい場所にテーブルなどを設置し、そこに背景シートを敷きます。窓際に設置する理由は、照明よりも自然光の方がキレイに撮れるからです。
背景シートを敷くときは、壁に貼ってマスキングテープなどで固定し、床やテーブルに直角ではなく曲線を描くようにします。曲線で敷くと、直角で敷いた場合に出る奥行きの横線が出ず、商品が引き立ちます。これで、背景シートの立ち上がりが完成です。
セッティングが完了したら、さっそく商品の撮影に取りかかりましょう。
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白背景で撮影が難しい商品の撮り方
白い背景は、商品とのミスマッチが少なく、商品の形状や色味が正しく伝わる写真が撮りやすいのがメリット。
ただし、白い色合いの商品を白い背景で撮影すると、背景と商品が馴染んで見えてしまい、輪郭があいまいになったり、物足りなく感じるケースがあります。また、カメラが自動的に「白い = 明るい」と判断し、写真が暗く仕上がることがあります。
白い背景で白い商品を撮影するのは難易度が高いのです。だからと言って、白の反対色である「黒」を背景にすると商品が埋もれ、重苦しい雰囲気の写真になってしまいます。
そんなときは、色味の主張が少ない「グレー」を背景にしましょう。グレーの背景は商品の色合いに影響が出にくく、商品の実物に近い明るさと色味を再現できます。
「グレー」と言ってもいろいろありますが、おすすめは中間の濃さのグレーです。濃いグレーは黒に近いため商品が明るく写り、薄いグレーは白に近いため商品が暗く写るからです。白背景で撮影が難しい商品を撮る場合は、中間の濃さのグレーを背景にしましょう。
まとめ
インターネットでの販売は、お客様が実際に商品を手に取って見ることができないため、写真が商品の色や形を判断する重要な情報源となります。
そのため、お客様が商品写真に求めていることは、「雰囲気」ではなく「わかりやすさ」です。商品の色や形状、ディテールがはっきり認識できる写真は、わかりやすく安心感を与えます。
わかりやすい商品写真は、背景をシンプルな白にするだけで撮影できます。商品の後ろに白い背景シートを敷くだけで、余計な物が写り込まなくなり、商品が引き立ちます。
シンプルな白背景で撮影することに慣れてきたら、ステップアップとして、背景を変えたり小物を置いたりして、商品の魅力をより引き立てるような写真撮影にチャレンジしてみてください。
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