ハンドメイド作品を販売する際、もっとも悩まされるのが「値段決め」ではないでしょうか。
値段を決めるのは他の誰でもない自分自身ですから、赤字覚悟の安い値段に設定することも、利益重視の高い値段に設定することもあなたの自由。とはいえ、安すぎると利益にならず、逆に高すぎても誰も買ってくれません。適正価格で販売する必要があるのです。
では、「適正価格」はどうやって決めるのでしょうか?
この疑問を解決するために、自分の利益も考え、お客様にも納得してもらえる、適正価格の考え方について詳しく解説いたします。
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動画解説
ハンドメイド作品の値段の決め方については、上記動画でもわかりやすく解説しています。本記事とあわせて見ていただくと、より理解が深まるのでぜひご覧ください。
その値段、安すぎない?安売りがダメな理由
- 「安かろう、悪かろう」と判断される
- 利益がないため作家活動の継続が困難になる
- あとからの値上げは難しい
ハンドメイド販売をはじめたばかりの新人作家さんだと、「とにかく誰かに買ってもらって、自分を知ってもらいたい!」という思いから、値段を安く設定しがち。
でも、赤字覚悟の安売りは絶対にダメ。
まず、安い値段を付けてしまうと、お客様に「安すぎるから、なんか怖い」と思われてしまい売れません。「安かろう、悪かろう」という言葉があるように、安い商品には、何かしらの裏があると判断されるからです。
もし安い値段で売れたとしても、利益が得られないようではずっとタダ働きをすることになります。それでは作家活動のモチベーションが維持できませんよね。
値段はあとから変更もできますが、「安すぎたから値上げしよう」という考えは好ましくありません。販売後に赤字になっていることに気づいて値上げするようでは、購入検討中のお客様が不満に思うからです。
すでに安売りしてしまった作家さんで、どうしても値上げが必要な作家さんは、後述する『安く売ってしまったら価格改定を』を参考に値上げを検討してみてください。
損しない!適正価格の考え方
では、適正価格とはどうやって決めるのでしょうか?
ハンドメイドマーケットに出品すれば同じジャンルの作品価格の「相場」が分かりますが、それはあくまで「目安」。相場につられて値段を安くしてしまうと損をします。
そんな失敗をしないための、適正価格の考え方について詳しく解説していきます。
値段は「原価」を基準に考える
ハンドメイド作品の値段は「原価」を基準に考えていきます。
原価とは、ハンドメイド作品を作るときに必要になったすべての費用こと。売値に占める原価の割合を「原価率」といい、原価率は儲けを何%にするかで決定します。
原価は仕入れ値のようなもの。その価格で売ると黒字にはなりませんから、売るだけ損をします。
たとえば、原価が1,000円なのに1,000円で販売すると、手元に1円も残らなくなります。当たり前に思われるかもしれませんが、多くの方が原価についてきちんと理解しておらず、知らずに赤字覚悟の激安価格で販売しているケースをよく目にします。
簡単でも良いので、きちんと原価を計算し、いくらで販売すれば利益が出るのか考えましょう。
どんなものが原価?
ハンドメイド作品の場合、以下のものが原価として挙げられます。
- 材料費
- 作業代
- 梱包代
材料費のほかに、1つのハンドメイド作品を作るのに費やした「時間」、梱包資材の代金や梱包に費やした時間の「梱包代」があることも覚えておきましょう。
材料費
「材料費」とは、1つの作品を作るのに費やした素材や部材の代金のこと。布やアクセサリーパーツはもちろんのこと、接着剤や着色料などの「消耗品」も含めましょう。
接着剤などは、1つの作品に使う量は少なくても、積み重なると大きな出費になります。大体で良いので計算しておくこと。たとえば、1つ300円の接着剤を10回で使い切ってしまうのであれば、1つの作品に30円を材料費として加算します。
作業代
忘れがちなのが、ハンドメイド作品の制作に費やした時間(作業代)。人件費ですね。作業代は「時給換算」すると分かりやすいです。
たとえば、10個の作品を作るのに1時間費やしたら、1時間分の時給で換算したあとに10で割ります。
時給は厚生労働省で最低賃金が公表されているので、そちらを参考にすると良いです。ちなみに、令和2年度の全国平均最低賃金は902円です。
梱包代
梱包代は、緩衝材などの資材代金だけではなく、梱包に費やした時間も含めましょう。お客様に手書きでメッセージを書くなら、その時間も原価に含めましょう。
なお、原価(材料費・人件費・梱包代)については、『ハンドメイド作品の原価を自動計算できる無料フォーム』のページで計算できるのでぜひ役立ててください。
原価の3倍が損しない適正価格
原価を見直してると、1つの作品を作って販売するのには、さまざまな費用がかかっていることが分かったと思います。利益を得るには、この原価に利益をのせて販売価格を決定します。
一般的に「売値は原価の3倍」と言われているように、ハンドメイド作品の場合も、利益を考えて値段を付けるのなら原価の3倍(2~4倍)が相場。
計算例として、ピアスを10個作成したときの販売価格をご紹介します。
ピアスを10個作成した場合 | ||
材料費 | 3,500円 | パーツ代や消耗品も含む |
作業代 | 3,000円 | 時給1,000円計算。3時間で制作 |
梱包代 | 1,500円 | 手紙・緩衝材・OPPシートなど |
原価合計 | 8,000円 | 材料費・作業代・梱包代 |
1個の原価 | 800円 | 8000÷10 |
販売価格 | 1,950円 | 原価の約2.5倍で計算 |
ハンドメイドマーケットで販売すると、手数料として10%ほど取られます。ですので、販売価格-原価-販売手数料=利益となります。
上記の計算例だと、1,950円-800円-195円=955円となり、1つの作品が売れるごとに、955円が利益となりました。
【上級編】価格帯を3段階に分ける
すべての作品に原価の3倍を設定しても良いですが、価格帯を3段階に分けるといったテクニックもあります。
これは、ゴルディロックスの原理と言われ、またの名を「松竹梅の法則」とも言います。
関連記事:ハンドメイド作品で売れやすい価格帯とは?
たとえば、
- 宣伝用に利益を抑えた商品(低価格帯):原価率50%以上(儲けが50%以下)
- 原価と利益のバランスがとれた商品(中価格帯):原価率40~30%(儲けが60~70%)
- 利益を多めにとる商品(高価格帯):原価率20%以下(儲けが80%以上)
などと価格帯を3つに分けます。
ただし、初心者がこのテクニックを使うと、安い価格帯ばかり売れてしまう可能性も。こうなると利益があまりない作品作りに追われてしまう可能性もあるので注意してください。
材料費・人件費・梱包代を入力すると、原価が自動で計算でき、「原価の何倍で販売する?」を選択すると、利益のでる販売価格が自動で計算されます。
さらに、送料をふくめた場合の販売価格や、販売手数料を加えたときの販売価格の計算も自動でできます。
材料費・人件費・梱包代については、『ハンドメイド作品の原価を自動計算できる無料フォーム』のページで計算できるのでぜひ役立ててください。
値段設定に迷ったときの解決策
適正価格の考え方を参考に値段を付けてみても、「この値段で、本当に良いのかな?」って悩みますよね。
そんなときは、
など、周りの人に意見を求めることで解決できます。
周りの知人に相談する
知人にハンドメイド作品に対して理解のある人がいるなら、実物を持って行って「これ、いくらだと思う?」と率直な意見を聞いてみましょう。意見はいろいろだと思いますが、参考程度にはなります。
注意点は、聞く相手を間違えないこと。
必ず、ターゲットにしているお客様の世代に聞くようにしましょう。
SNSで不特定多数の作家さんに意見を求める
知人に聞く相手がいないときにおすすめなのが、SNSを利用すること。ほかのハンドメイド作家さんに向けて意見を求めます。そのとき、ハンドメイドマーケットに掲載するのと同じ画像を見せると良いでしょう。
SNSで意見を求めると、本当にたくさんの回答が得られます。金額もバラバラ。一番多かった金額の平均を参考にしましょう。
マーケットプレイスの運営に聞いてみる
マーケットプレイスに相談するのもおすすです。運営元は作家さんの気持ちもよく理解してくれていますし、親身になって相談に乗ってくれます。
たとえば、minneだったら「minne LAB」があります。そこにいるスタッフは、価格設定の相談だけではなく、販売方法や撮影方法についても相談に乗ってくれます。
遠方で行けない方、ほかのハンドメイドマーケットに出品している方は、運営元にメールで相談することも検討してみてください。
販売場所によって価格は変える?変えない?
販売価格が一度決まっても、作家活動を続けていると悩むのが、販売場所によって値段を変えるか?変えないか?という課題。
たとえば、ハンドメイドマーケットなどインターネット上で「2,000円」として販売したものを、販売イベントや委託販売でも同じ価格にするかどうかです。
というのも、販売イベントや委託販売では、かかる費用がまったく異なるからです。
販売場所が変われば、コストも変わる
ハンドメイドマーケット(ネット販売)なら、販売手数料や振込手数料くらいしかとられません。ほかの販売方法に比べて、もっともコストがかからず、リスクもありません。
一方、委託販売ではハンドメイドマーケットよりも高い手数料を取られます(お店にもよりますが、30%以上が多いです)。場所によっては売れなくても置いてもらうだけでスペース代を支払うことになります。
販売イベントだと出展するだけで出展料がかかります。ディスプレイ用の什器を借りるならレンタル料がかかりますし、交通費などもかかるため、トータルで多額の出費があります。
このように、販売場所によってコストがまったく異なるため、原価や経費も全然違ってきます。
なお、委託販売の手数料については『ハンドメイド作品の委託販売、手数料の相場はどのくらい?』で解説していますのでご参考に。
-
ハンドメイド作品の委託販売、手数料の相場はどのくらい?
今すぐ読む
販売場所ごとに価格は変えるべき?
原価や経費が変われば、それらを価格に反映させて売らなければ赤字になります。ですので、収入が同じになるように販売場所ごとに販売価格を見直すことをおすすめします。マーケットプレイスならこの値段、販売イベントならこの値段、と場所ごとに調整します。
「場所ごとに価格を変えてしまったら、お客様が不満に思うかもしれない」と心配になる作家さんもいるかもしれません。それなら一律料金にしても良いですが、お客様のことを気にしすぎて自分自身がガマンしてしまうと、作家活動を続けることが困難になります。
ハンドメイド作品が好きなお客様は、販売場所ごとに値段が変わることにも理解がある方が多いので、そこまで心配しなくても大丈夫ですよ。
ただし、委託販売の場合はお店に迷惑がかかるので値段は変えないほうが良いでしょう。
-
いくらが正解?ハンドメイド販売イベントでの値段の決め方
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安く売ってしまったら価格改定を
「なんとなく雰囲気で価格を安くしてしまった」「原価を計算せず、ほかの作家さんの価格を参考に安く販売してしまった」といった状況にある作家さんは、価格改定を検討してみてください。
価格改定をすることによって、あなたの作品のイメージがアップしたり、客層のランクが上がることもあります。
価格改定のタイミングはいつでも大丈夫ですが、事前に告知が必要な場合もあります。
はじめたばかりなら告知なしでもOK
ハンドメイドマーケットに出品している作家さんで、
- まだ1つも売れていない
- 販売実績が少ない
- リピーターがいない
- お気に入り登録が少ない
といった状況であれば、事前に告知しないで価格改定をしても問題ありません。
販売実績があるなら告知しよう
ある程度の販売実績があり、
- ファンがいる
- リピーターのお客様がいる
- SNSでも広く周知している
といった状況なら、事前に告知しないとお客様が不満に思うかもしれません。こういった場合は、きちんとお客様に説明をする必要があります。
また、そこまで販売実績がなくても、「予告なしに値上げするのは申し訳ない」と思うのであれば、事前に告知しておきましょう。
以下に例文をご用意したので、これを参考にプロフィールなどに記載してください。
告知例文
お知らせ
この度、○○(作品名)に使用している材料を見直すことといたしました。以前よりも良質な素材を使用することで強度が増し、より高級感のある仕上がりとなっています。
新しい材料は○月制作分から適用し、同月より価格を改定させていただきます。今後とも、より良いハンドメイド作品を皆様にお届けする所存です。何卒、よろしくお願いいたします。
告知期間は、少なくとも価格改定の1ヵ月前が良いかと思います。
値上げについては『どう伝えるのがベスト?ハンドメイド作品の値上げの理由の伝え方』で解説していますのでご参考にしてください。
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ハンドメイド作品を値上げするときの告知例文
今すぐ読む
まとめ
多くの作家さんが悩み、大事な「価格」についてのお話でしたので、長文になってしまいました。さいごまで読んでくださり、ありがとうございました。
長かったのでまとめると、以下のようになります。
- 安売りすると作家活動が続けられなくなる。適正価格で販売すること。
- 適正価格は原価の3倍(2~4倍)が相場。
- 価格に迷ったら周りに相談し、参考にする。
- 販売場所が変わればコストも変わる。場所ごとに適正価格を考えるべき。
- 安く売ってしまたら今すぐ値上げを検討。
ハンドメイド活動を長く続けるためには、どこかで妥協しないこと。お客様も、そして自分自身もハッピーになる価格を求めてくださいね。
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